能《蝉丸》の蝉丸の役をつとめさせていただきました

レポート

6月6日山本能楽堂にて大役を勤めさせていただきました。能《蝉丸》の蝉丸の役です。

能の曲のネーミングは少し不思議な所があります。《蝉丸》という曲名を聞くと、皆様は大抵「蝉丸が主役なのだな」と思われるかもしれません。『ドラえもん』はドラえもんが主役ですし、『クレヨンしんちゃん』はしんのすけが主役ですね。

しかし、能の曲、例えば《船弁慶》なら、主人公は弁慶ではなく静御前、《葵上》にいたっては「葵上」は舞台にはただ小袖が舞台に敷かれるだけで、葵上が病床に臥しているとの表現。

本来《蝉丸》の蝉丸役は主役ではなくツレと呼ばれる助演になります。

しかし、以上の事を踏まえた上で大切な事が。それは今回は「替之型」と呼ばれる特殊演出だったのです。この演出になると、「両シテ」と言って、主役(シテ)の逆髪(蝉丸の姉宮)も、助演(ツレ)の蝉丸も、どちらも主役になるのです。またはシテとツレが入れ替わり蝉丸が主役になることも。つまり、私の勤める蝉丸の格が上がるのです。

盲目の役であること、しかも皇家の役であること、本当に大変な役でした。師匠はじめ先輩方にも色々ご指導いただき、何とか終えることができましたが……後日出来上がったDVDを見て落ち込みました。

年を経る毎に様々な、ステップアップの曲が私を待っています。苦悩して一生を過ごす辛さと、同時にその壁を突き破っていく面白さ。本当に不思議な世界に入ったのだなと思います。

お越しいただきました皆様、ありがとうございました。