能meets高知〜静と動〜ありがとうございました!

レポート

「高知に能を」…
という能meetsスタッフ一同の思いが高まり、
先日11月8日、高知県立美術館能楽堂におきまして、舞囃子の形式でしたが「能meets高知〜静と動〜」を行う事ができました。

当日は大変な風雨にも関わらず、お足元を濡らしながらお越しいただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
また大阪よりも駆付けてくださいました方もいらっしゃいます。誠にありがとうございました。

「これぞ能、これも能」

というテーマでお送りしました。
静かな演目と、動きの激しい演目。

実は普段我々能楽師は、能の公演を行いプログラムを考える時にはこの2つを視野に入れている事が多いのです。
能を2曲演じる時に、「一方は静かな曲だから、もう一曲は動きのある演目にしよう」という具合です。

その事をより分かりやすくお客様にお伝えしたいと思い、今回の公演の企画を致しました。
番組表には記載しませんでしたが、
第一部の解説の際には、シテ方武田宗典さんにお願いし、「井筒」の核心部分…
このシーンは主役が舞台中央に座ったままほとんど動かないのです…を敢えて行い、

「今の演技いかがでしたか」
とお客様に投げかけました。

「静」と言っても、心が、体の内部の何かが、動いている。

逆も然りです。

「熊坂」は長刀を持ち縦横無尽に舞台を激しく動きます。
でも体の中ではどこか冷静な、第三者的な自分を持っている。

そして「一球入魂」の世界である能は、激しいと言っても皆さんが想像する程のアクロバットではありません。

必ず体の中の深い部分に、「んっ!」と力を籠めて、そしてやっと手があがる。
噴火に例えると、動き出す為のマグマだまりのようなものが丹田にうごめき、やっと右足を一歩出す。
この「んっ!」と力を体内に籠める事を、「コミ」と呼んでいますが、静かな演目にせよ、激しい演目にせよ、このコミが原動力となり物事が運んでいく。
小鼓は、コミを取ってからやっと一発ポンと打てるのです。
だからポポポンと早く打てるはずがないのです。

そこが「能」と、他の古典芸能や西洋音楽と違うところ。
目に見えないものを大切にしている証拠です。

今回の公演に当たり、一年近く前から色んな構想をスタッフと協議しながら進めて参りました。
高知で講座を開き、
高知の皆様にお話をする機会に恵まれ、
その高知の皆様のいつものキラキラした反応。
高知スタッフの熱すぎる程の思い。
そして、高知に素晴らしい能楽堂があるということ。
高知に沢山の劇団の方々が活動されており、舞台に携わる方も高知にいらっしゃるということ。

これらの事からも、高知で本格的な能公演を是非行いたいと考えておりました。
我々能meetsにとりましても、思い出深い舞台となりました。
高知の皆様ありがとうございました。
そして、遠方よりわざわざ駆付けてご出演いただきました能楽師の皆様にも、この場をお借りしまして御礼申し上げます。