呼子こども能教室の卒業生

お知らせ

長らく投稿せず大変失礼いたしました。

3月5日(日)、佐賀県唐津市呼子、呼子公民館にて、日頃私が指導させていただいております「呼子こども能教室発表会」が行われました。当日は天気もよく、寒さも随分とやさしくなり、呼子の皆様見守る中、こどもたちは各々舞台を勤めました。稽古充分と自分の中で納得して舞台に立った子もいれば、不安で不安で緊張して挑んだ子も。

指導者として私は、上手な舞台を望んでいるわけではありません(勿論そうなればいいのですが)。こどもたちが自分で線引きをし、「ここまではできないと駄目だ」「今日の稽古ではここまでできるようにしよう」と、自分で範囲を決めてその通りにやり遂げられるか、そういう気持ちを育てる事が大切であるような気が致します。

私も修行中師匠から教えていただいた事です。「舞台の掃除を完璧にしろとは言っていない。今日はこの部分をきれいにしようとか、何センチ以上のホコリは出さないようにしようとか、自分で範囲を決めなさい。そしてその通りに出来るかどうか。つまりこの自分との戦いが修行なんだ」と。

さて今回で9回目、つまり9年目を迎えたこの教室もついに卒業生を送り出すことになりました。

普通は中学生になると、部活や勉強等で自然と教室から抜けてしまうことが多いのですが、このたび高校3年生まで、つまり最後まで稽古をやり遂げた2人が、この度教室を後にしました。

1人は牧山祐介君。彼はなんとこの教室が始まった1期からの参加。小学4年だった彼は少しやんちゃな印象を受けましたが、お稽古を続ける内に舞台だけでなく、中身も変わっていったようです。そしてある時、彼から電話がかかってきて、

「呼子のおじいちゃんおばあちゃん達が喜ぶ事をしたい」

と、老人会で仕舞を披露したいと申し出がありました。そしてその模様が新聞に取り上げられ、地元の大人の皆さんが見守るなか、無事に舞台を勤めました。

大阪にも舞台を見に来て一番前でずっと正座でいることも。楽屋から「君の子か?」と話題にもなりました。中学生になって少し稽古から遠ざかった事もありましたが、私が何も言わなくとも必ず稽古には戻ってきました。9年稽古を続けた彼は就職が決まり、社会人に。今度は大人としていつかお稽古に戻ってきてくれると嬉しいです。

もう1人は中島薫ちゃん。彼女は2期からの稽古に参加しています。彼女が入ってきた時の子供教室が一番生徒が多く、あまり手が回らなかったのですが、第一印象は、感情が表に出ないというか、大人しいというイメージ。しかし結局その多かったメンバーの中で彼女だけが残ることになりました。

お稽古がすめばすっと帰っていく。「楽しんでくれてるのだろうか?」とこちらが不安になることもありましたが、ある時彼女が、生徒会に参加したりと実は学校生活を本当に積極的に参加していると聞き、驚いたことがあります。それが能の教室を通じて積極的になったのかどうかは分かりませんが、少しでもその明るい前向きな気持ちの形成に役立てたのであれば私も嬉しく思います。

最後の舞台に少し難しい「巴」という曲に挑戦させました。長刀さばきをしないといけないのですが、学校が忙しく中々稽古に来られなかった彼女は3日間の稽古で見事当日は完璧にこなしました。集中力があるようで、今しないといけない事があればそれを優先してそれに真剣になることができるように感じました。

彼女はこれから、東京の大学に通うことになります。お稽古の合間に一度だけ、将来の夢について彼女が話していたことがありました。その夢を実現できるように頑張ってほしいと思います。また、私たち大人がもう少し周りにいてサポートしてあげたらと思います。

社会人といえども、大学生といえども、まだ一人前ではありません。まだまだ学ぶことが沢山あります。この2人は、お稽古の時は私が口で教えなかった事も自然と身に付けていました。私の仕草やふとしたものを自然に自分の中に取り込んでいったのでしょう。この気持ち、つまり「教わろう」という気持ちがあれば、絶対に大丈夫!

2人の将来が本当に楽しみです。

祐介君、就職おめでとうございます。

薫ちゃん、入学おめでとうございます。