井筒、上花也

お知らせ

能は、女性の役を演じる時、所作そのものや声そのものを女性に似せて演じる事はしない。女性の声や女性の所作をしなくても、女性を演じる事ができるというのが能の考え方であり、それこそが本来の「物まね」である。

能は、演劇ではありながら、演じている内にそれが音楽的世界や舞踊的世界にまで昇華していき、観客はやがて「筋書き」でない何かに心を奪われていくものである。

能は、○○年前に「紀有常の娘の霊」が僧の前に現れて…というような「歴史的伝説的事実」を単に述べるのではなく、今もその霊が現れてくるかのような、時代を超えた舞台が繰り広げられる。従って能は、決して「昔話」の伝承にとどまらないのである。

能は、目に見える表面的な表現というよりも、「内的」な力や思いをしっかり体の中に携える事の方が大切であり、その体の中に籠めた何かが、その演じている「曲」によって表に引き出され、声のトーンであったり、摺足の運び方であったり、体のカマエ等に影響を及ぼし、結果可視的可聴的とも言える程の所作や囃子や謡等がそこに生まれる。

…今挙げた、能の難しい特徴を見事に備えているのが、世阿弥の名作「井筒」。

私にはとても勤まらないと敬遠しておりましたが、今回その曲に挑戦させていただきます。
演じる側も鑑賞する側も、大変難しい演目です。だから、面白いのです。

8月8日、奇しくも「世阿弥の命日」。
その世阿弥も「井筒、上花也」と、この作品を自賛しています。

「世阿弥の命日」に「世阿弥の名作」を。

「なら燈花会能」
令和3年8月8日㈰13:00開演(開場正午)
奈良春日野国際フォーラム甍〜I・RA・KA〜
演目
解説 伊勢物語と能楽について  山中雅志
仕舞「小 塩」塩谷 恵
仕舞「杜 若」山中雅志
仕舞「雲林院」山階彌右衛門
 
能「井 筒」林本 大  原  大 他

※能「井筒」の事前講座も行います。
「能meets北浜」井筒解説
令和3年7月23日(金祝)14:00 北浜RONDO (大阪市中央区伏見町2-2-6青山ビル地下1階)
 
事前講座、なら燈花会能チケット共にこのホームページにて受付けております。