能meets能「夜討曽我 十番斬」スタッフレポート

能meetsスタッフブログ

スタッフです。

11月3日(祝金)能meets能「夜討曽我 十番斬」

開催しました。

 

想いも強いのですが…

レポート一回分で書くほどの主催の催しを、1日に二度開催したので、レポートも二つに分かれてしまいます…

お読みいただけると嬉しいです。

 

さて、

 

ロビーでは本日二度目の開場準備。

先ほどのチケット整理などをしつつ、次のチケットを準備。

開場時間前にすでにお待ちいただくなど、皆さまの期待の高さだと、こちらもまた嬉しくなりました。

 

楽屋でも、能meets殺陣の皆さまのお着物の片付けから、夜討曽我の装束の準備と、人数が多い分もちろん装束も多くなり、大変な作業です。

 

広い大槻能楽堂の見所の8割以上が埋まりました。

しかし、スタッフ陣としては満席です!と先生に報告したかった思いもあります。

スタッフ陣の力足らずでしたが、終演後のお客様のお顔や言葉、アンケートにそれ以上の喜びを感じることが出来ました。ありがとうございます。

 

開演前は、念入りに携帯電話スマホの電源の注意をさせていただきました。

意図してではなく、うっかりもありますので。

大切に大切に進めてきたこれまで

いよいよ会が始まります。

 

3年半前に「能にもチャンバラがある」と林本先生が切り出され、斬り組を体験する能meets殺陣を開始。

お稽古はほぼ林本先生お一人でしたが、本番前のお稽古場には他の先生が来てくださって能楽師二人の斬り組を見た時、やっぱり観たいという気持ちが沸き起こり

本番で参加の皆さまが成果をあげられたこれまでの4回の舞台は、それをもっともっと引き上げてくれるに十分すぎるほど素晴らしいものでした。

初めての能meets殺陣の後、帰りの車内で上野雄介先生が、映像見たことありますか?と見せて下さった十番斬の斬り組シーン。

 

あれをいよいよこの目で、実際に、今日集まってくださった皆様と拝見することが出来るんです。

 

いつか…が、再来年ぐらいという言葉に変わり

本当にやりましょう、と予算計画を先生の前に広げ

林本先生が出勤のお願いを先生方にはじめられ

チラシ打ち合わせ、撮影

どんどん現実になっていく日々でした。

それでもまだやっぱり無事に開催できるかは、制作的なことだけではない問題があるここ数年。

 

各地での夜討曽我一曲解説

梵保庵での特別講座

応援くださる方からのお声がけ

 

それが実を結ぶ日です。

ここまできたら、もう。

 

おシテ前の自らの事前講座。

スタッフの企画に応えてくださった今回。

林本先生が事前講座後どれほどお疲れかと…そんなことも思いましたが、後で聞くと栄養ドリンクをそっと手渡してくださる先生がいらっしゃったり、先ほどのように若手の先生方が率先して片付けや準備をしてくださったりと…

舞台裏はではもう始まっていたようです。

 

楽屋解説の時に先生が仰っていました。

舞台は楽屋から始まる、と。

それをまた実感した催しでした。

 

林本先生がこの日のためにとキャスティングされた先生方です。

その為に少しでもせめてもと、事前講座後の周辺マップのように、楽屋にもできる限りの準備をされていました。

十分ではなかったかもしれませんが、そういったひとつひとつが伝わっていく部分もあるのかもしれません。

能が始まる前、

舞囃子から衝撃的でした。

何度も拝見していた大阪の大槻裕一先生。

まだお若いですが、そのお舞台は普段から素晴らしいと思っていました。

が、初めて舞を拝見した東京の坂口貴信先生。

林本先生からお聞きはしていましたが、目が離せなくなりました。

先生のキャスティングの意味、意図。

それはもちろん大槻文蔵先生、そして林本先生の師匠である山階彌右衛門先生もそうです。

この芸をお客様に観ていただきたい!

そしてきっと、何よりご自身が観たい!!

そんなお気持ちで考え工夫されてきた全てが詰まった舞台。

地頭の京都の味方団先生、その横には東京からの坂口貴信先生、武田文志先生。

もちろん鬼王団三郎のもう一組の大切な兄弟のキャスティング。(書き出すと全ての方に…となってしまいます!)

それはなかなか観ることがない東京の能楽師の先生であったり、大阪、京都、東京の先生方や若手やベテランの組み合わせであったり、普段の関係であったり…

林本先生が時に

師匠である山階先生に、

もう1人のおシテであり朋友である宗典先生にも大切に相談しながら決めた皆さまです。

もちろん叶わなかったものもあります、

その中で「この方に!」という想いがこもった番組です。

先日の文の会(武田文志先生主催)を拝見した時も感じました、もちろんこれまでの宗典先生の会や、山階会など

主催の「想い」それも舞台に反映されるのだと。

それは観ている側にも伝わります。

その人間そのものが見えてくる、という舞台の恐ろしさでもあり、面白さ、素晴らしさと通じるのかもしれません。

 

休憩を挟み

いよいよ、いよいよ「夜討曽我」です。

能meets殺陣で拝見していた

紋付姿の林本先生、宗典先生の曽我兄弟。

お囃子もすべてが揃っていません。

それでも能楽師の先生と参加者の皆さまで創り上げ、感じられた「気」

 

それが装束、お囃子、地謡、後見と揃った「能」として、いよいよ大槻能楽堂の舞台で…

 

実はスタッフは準備がどんどん進められ舞台が近づくにつれ、ある不安を感じていました。

作業の膨大さや、集客や宣伝準備とは違う不安。

 

それは

楽しめなかったらどうしよう

というものでした。

能meets殺陣の参加者の皆さまの、一回限り10分ほどで終わるその舞台にかける「気」を観て感動しておりました。十分すぎるほどに。

だから、もしかすると、

本番の能楽師の先生方の舞台は「斬り組ですね、できます」「わかりました、この型ですね」といった

「できる」からこその別の「技術の舞台」を観ることになるのでは…と思ってしまっていたのです。

それを観て心が動くのだろうか、と。

 

先月の素晴らしい能meets殺陣東京を終えて、更に増した不安でした。

が、それがとんでもない恥ずかしい思い違いだったというのは前日の申合せ中にロビーで作業をしていた時、漏れ聞こえてきた「音」を聞いた時にわかりました。

 

この中で、いま、すごいことがおこなわれている。

ということが「音」だけで伝わってきたんです。

 

実際に、明日観たら、どうなるんだろうとも思うほどでした。

技術だけでないからこそ「プロ」なんですね。

今更そんなことを…。

本当に恥ずかしい気持ちになりました。

曽我兄弟の登場。

講座を聞いたからこそ、そこまでの経緯から2人の背景を勝手に想像して色々な想いで兄弟を観ることが出来ました。

そこから始まるのではなく、もう始まっている物語を観る感覚。

前場こそスタッフも数点撮影をしましたが…

後場はもうレンズ越しに観るのが憚られ、ただただ見入っていました。

それは前場の緊張感と、講座を聞いていたからこそ後場がどういったところから始まるのかがわかっていたので…

 

間狂言での山本則重先生、則秀先生の狂言に大いに笑いました。

(実はこの時は公表されてなかったので知らなかったのですが、お2人の御尊父である山本則俊先生が前日の2日にご逝去され…そんな中、翌日大阪までお越しくださってのお舞台でした。

則俊先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。

そして則重先生、則秀先生に改めて御礼申し上げます。)

涙も乾くほどに笑った後、そこからの一気に高まるお囃子での緊張感。

 

出てきた曽我兄弟二人が背負っているもの。

間狂言で笑ったからこそ、またその差に、これから始まることに、震えました。

この緩急、空気

後場では「これまでの活動が」なんて感傷に浸っている時間は一瞬たりともありませんでした。

ハプニングすら、臨場感を増すものに思え

いま、目の前で行われている現実に、ただただ

心が動き、熱くなり、驚き…

途中は、結末は知っているのに舞台上の気迫に「このまま曽我兄弟が勝つんじゃないか」という気にすらなり

このままずっと観ていたいと、

永遠に続いてほしいとも思えました。

兄弟それぞれの生き様、死に様

最期までカッコよく潔く、

でも生きようともし、

勝とうともし

その中で本懐を遂げ、

武士として生き、

そして果てる。

切なく哀しく、

なのに晴れやかな…

色々な感情が湧き起こりました。

コチラはほんの一部

撮影いただいた野口さまに頂戴した写真です。

今見ても、決意、覚悟、宿命そんな言葉を感じ、あの時の感情を思い出せます。

 

終演後お見送りをしていても、皆さまの表情や実際のお声がけに本当に嬉しくなり、こみ上げてくるものがありました。

 

林本先生には、全国での講座

当日の自らの講座に能meets殺陣とかなりのご負担をおかけしましたが、本当にやって、やれて、良かったと感じる終演後でした。

 

帰りがけスタッフに

「ひとつお聞きしたいことがあるんですけど」と、講座には参加されなかったお一人のご婦人から…

 

それは

「最後の謡はなぜ〇〇〇〇〇」で終わるのですか?

というものでした。

正に、林本先生が講座で必ず仰ること。

北浜で、殺陣東京で博多で宇都宮で、そして今日も聞いたスタッフは「それは…」と張り切って答えさせていただきました。

 

こういう考え方

あるいはこういう見方がある

それをどちらと感じるかはお客様ご自身の自由なんですよ、と。

 

ご婦人は大きく頷いて「よくわかりました」と。

その方がどういう結末を想像したかはお聞きしませんでしたが、ご自身の夜討曽我を持って帰っていただけたことと思います。

大槻能楽堂さま

お世話になった先生方

お手伝いくださった皆さま

そして

ご来場くださった皆さま、本当にありがとうございました。

武田宗典先生、林本先生、お疲れ様でした、発案からこの日まで本当にありがとうございました!

 

後場を肉眼で見たかったと書いてしまった私の言葉にどれほど説得力があるかわかりませんが…

11月27日開始予定オンライン配信があります!

 

ぴあライブストリーム詳細はコチラ

 

 

 

もちろん生で、能楽堂で、それに越したことはありませんが、色々なご事情もあると思いますので是非とも配信をお楽しみくださいませ。

当日のアンケートでも「配信でまた観たいです!」という嬉しい意見もありましたので、ご来場いただいた方も是非。

 

 

次回能meets

大阪 能meets北浜

11月13日(月)19時

「通小町」曲解説

※1月13日皿田能で林本先生がツレを勤められます。

北浜ご予約はコチラ

東京 能meets新橋(五ヶ月ぶりの新橋です!)

11月20日(月)19時

「春日龍神」曲解説

※1月6日国立能楽堂で林本先生がツレを勤められます。

能meets新橋詳細はコチラ

 

 

 

高知 能meets高知11月27日(月)

13時「囃子のお話」19時半「夜討曽我」曲解説

※17時半~18時半ワンコイン殺陣体験

能meets高知詳細はコチラ