「能meets能」ご来場ありがとうございました

レポート

やっと終わったか、もう終わったか、そんな感じで今も余韻が体の中に残っています。
11月3日、雨男の私には似合わず、大変天気の良い一日でした。
能「夜討曽我 十番斬」主役である曽我五郎時致の役を無事に勤めました。
遅くなりましたが、ご来場いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

この演目は沢山の出演者が舞台に上がります。従いまして楽屋も大変な人だかり。
大槻能楽堂ではいつも楽屋の端の方で着替えておりましたが、さすがにこの日は自身の着替えは勿論、雑務もこなしつつ、スタッフさんへの指示や報告を受けながらの進行でしたので、奥の楽屋に陣取らせていただきました。
先輩方でも、その奥の方へわざわざお越しになり私に挨拶をしてくださいました。

当日は事前講座としまして、「能meets殺陣」も行いましたので、実質2つの公演をこなしているような形。後輩の能楽師の皆様が段取りよく動いてくださり、助けられました。
また本公演では、私が日頃描いていたキャスティングが、今目の前の舞台に繰り広げられているという感慨に胸が高鳴りました。
ここでは詳しくは申しませんが、本当にお一人お一人が思いを持ってご自身の役を全うしてくださったと感じています。

自身としては、この「夜討曽我」を勤めた事で、登場人物の思いや心に触れる事ができなければ、このような曲を演じる事は到底できない事を痛感しました。

能は幽玄で静寂な世界こそが!と仰る方には、「夜討曽我」は単なるショー的な演目にしか見えないかもしれませんが、私はこのような曲も含めて「能」であるなと今回強く思いました。
講座ではいつも申し上げている事ですが、どのような事件が起こったのかではなく、どのように人の心が動いたか…それこそが「ドラマティック」だと思います。

この公演は、数年前から構想を頭の中に毎日のように膨らませてきました。スタッフの方から提案された時は、まさかそんな大それた演目などできる筈もないと突っぱねたのですが、スタッフさんの熱いお気持ちがあり、私も心動かされました。
それから長い時間をかけて、どのようにお客様に喜んでいただけるか、そして且つ能のうわべだけでない、本当の魅力を伝えられるか苦心しました。
「なぜできないのか」を考えるよりも、「どうすればできるか」を考えさせてくださいました。

舞台の上でも、そして公演の運営としても、今回の公演で「能meets」は沢山学びました。学ばせていただきました。本当にありがとうございました。

沢山の出演者の皆様、ご来場いただきました沢山の皆様、そして沢山のスタッフの皆様、本当に本当にありがとうございました。
                                        林本  大
最後に
間狂言として出演してくださいました、山本則重さん山本則秀さん。前日にご尊父様ご逝去、深い悲しみの中私共の公演にわざわざ駆けつけてくださいました。この事は私は一生忘れません。厚く御礼申し上げますと共に、心より御悔やみ申し上げます。