数年に一度の写真?!

レポート

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能の世界、能楽師は「分業」。能の役者は、それぞれシテ方(主役、ツレやトモの役、地謡、後見)、ワキ方(いわゆる脇役)、囃子方(笛、小鼓、大鼓、太鼓)、狂言方という4つのパートに分かれます。

私はシテ方です。私がワキ方に移行したり、囃子方を勤めたりすることはありません。小鼓を演奏する演者はずっと、一生小鼓を打ち続けていくのです。

「焼き鳥屋」「たこ焼き屋」「寿司屋」のように、日本は一つの分野を集中して、一生かけて、取り組んでいく精神性を持っているように思います。一つの事のみを必死に作業して、その分野のレベルアップをはかっていく。能の世界も、自分が与えられた事のみを生涯かけて稽古修練し、舞台ではそうしてきた皆がぶつかり合う。そうしてよりよい舞台が生み出されていくのです。

勿論、修行時代に他の分野の事は必ず勉強します。私も囃子は全てお稽古させていただきました。その上で、そのお稽古した事を踏まえて、自分の「シテ方」という役を勤める糧にするのです。

……と、偉そうな事を書きながら、実は数年に一度位、「乱能(らんのう)」という、自分の担当分野を全て入れ替えて舞台を勤める、お祭りのような催しがあります。例えば普段楽器を演奏する人が狂言をしたり、ワキ方が楽器を演奏したり。

さる6月11日、「山本能楽堂90周年記念能」というおめでたい催しの終了後のお客様も交えた懇親会にて、この乱能(実際には舞囃子のみでしたが)の舞台に参加させていただきました!担当したのは一番苦手な「笛」。

「笛」は修行時代に習いたての時に、笛の講師の先生から、「君の笛は聞いてるとしんどくなるから、次の稽古からは笛持ってこなくていい」と言われた程。

今回久しぶりに笛を吹くに当たり、同期の笛方斉藤敦氏にお願いし、数度お稽古伺いました。

……結果は悲惨な有様でした。音は鳴らない、譜を間違えてしまう。お祭りという事で皆さんには大目に見ていただいたようです。

しかしながら、いつもとは違う場所に座る事で、いつもの私の位置が見えてくる。「ワキの演者はこんな思いで謡ってるのか」「囃子方は私たちのこのような謡をこんな気持ちで演奏しているのか」など。

たまに違う場所に座って、まわりの事をよく知り、そしてまたいつもの場所に戻る。本当に能の世界は不思議で、日本的で、魅力的だと思います。

お越しくださいました皆様、ありがとうございました。