「望月」に思う

お知らせ

その日、心を動かされた。いや、逆に心が止まっていたのではなかっただろうか。
その衝動を忘れたくなかった。

次の日に大学の図書館や部室へ飛び込んで、能のビデオを片っ端から見た。そこには、山本眞義師の映像もあり、観世寿夫師の舞台も拝見することができた。

高校時代に少し演劇をかじっていた私にとって「能」との出会いは強烈だった。簡単な知識だけで、「新しい演劇のスタイル」と色々な事を試していたが、そんなことは能が既に全ておこなっていた。
 
能に憑りつかれた私は、大学の試験よりも、成人式よりも能楽堂へ出向いて能を観ることを優先した。

お金がない時は京都まで自転車で行き、疲れて客席で寝てしまう事もあった。師にお願いして「カバン持ち」と称してすっと楽屋に入り、そのまま客席で拝見させていただいた事もあった。

そして今「能楽師 林本 大」をさせていただける幸せ。

平成7年秋。大阪能楽会館。山本章弘師「望月」。

あれが始まりだった。

あの時の「望月」を今度は私が勤めさせていただく。

あの時のように、もしかしたら客席に私みたいな人がいるかもしれない。

あの時のように、もしかしたら人の人生を変えてしまうかもしれない。

そんな事を思いながら、必死に勤めさせていただきます。

第1回 ~林本大独立10周年記念~ 「大の会」
日時:平成30年4月30日(月振)14時始(13時開場)
於:山本能楽堂(大阪市営地下鉄「谷町四丁目」駅徒歩4分)

狂言《蚊相撲 かずもう》
(大名)善竹隆司
(蚊の精)善竹忠一郎
(太郎冠者)上吉川徹

能《望月 もちづき》
(小澤友房)林本大
(安田ノ妻)武田宗典
(花若)吉井晟朝
(望月秋長)福王知登
(下人)善竹隆平

(笛)杉市和
(小鼓)成田達志
(大鼓)山本哲也
(太鼓)中田弘美

(後見)波多野晋・松浦信一郎・吉井基晴
(地謡)山本章弘・杉浦豊彦・山本博通・大西礼久・森本哲郎・今村一夫・井戸良祐・今村哲朗

お申込みは申込フォームから承ります。

大の会 望月

大の会 望月