千歳せんざい

君の千歳を経ん事も 天つ少女の羽衣よ 鳴るハ瀧の水 日ハ照るとも

能楽には通常の能や狂言などの演目とは別に、《翁》と呼ばれる天下泰平・国土安穏を祝祷する神事芸があります。特にあらすじ、ストーリーは存在しません。よく「能にして能にあらず」と言われますが、古くからの祈祷の歌舞の形を残しており、能や狂言の役者が演じるものの、能や狂言とは別種の芸と考えるべきかと思われます。現在は、お正月の会やこけら落しなど改まった場で上演されています。

その中で、祭事の主催者である翁の前に、露払いとして颯爽と舞う若者の役が「千歳」です。

まめ知識

観世流と宝生流の《翁》においてはシテ方が千歳をつとめますが、金春流・金剛流・喜多流の《翁》では、狂言方が千歳をつとめます。

世阿弥の談話を書き留めた『申楽談儀』第17条に「露払はその頃槌大夫舞ひし也。上手なれば、脇の仕手のうちにも舞ふとやらん、承りし也」とあって、当時は狂言役者である槌大夫が舞うのが本来だったようですが、すでにシテ方(脇の仕手)が舞う例もあったようです。

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たにまち能 於・山本能楽堂