令和五年、ありがとうございました

お知らせ

 令和五年もいよいよ暮れて参りました。この一年も色んな方々に支えられて活動をすることができました。まずはお世話になりました皆様方に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 
 前年の令和四年は、コロナ感染による舞台激減からのぶり返しで、逆に舞台数が多く、私自身主役を18回も勤めました。数の多さもあり、消化不良の舞台も幾つか生んでしまいました。令和五年はその反省から、重要な役を絞り、一つ一つの舞台をしっかり勤めたつもりです。
 いつも先輩方のご厚意により、難曲に挑戦させていただきます松華会定期能では「山姥」を二月に演じさせていただきました。今までは難曲に対しては少し遠慮気味で演じるのを避けておりましたが、やはり演じることの難しい演目は勉強になる、それを強く感じた一曲でした。
 そして本年一番の軸でありました、十一月の能meets能では「夜討曽我 十番斬」を勤めさせていただきました。この日の為に念入りな準備や、各地での講座。できるだけ漏らさず皆様を事前の解説に導こうと努めました。信頼のおける出演者やスタッフの皆様には心より御礼申し上げます。
 
 その他も様々な活動を行わせていただきました。もう15年以上?通っております大阪府立清水谷高等学校の授業が発展をし、担当の先生の熱意により本公演が実現。「安達原」を三度勤めました。また佐賀県の呼子でもワークショップ「能をYOBUKO」を続けておりましたが、その集大成としまして一月末に「石橋 大獅子」を、長年呼子での公演にお力添えくださってます井戸良祐先輩と共演できましたのは大きな喜びでした。こちらも地元の皆様の多大なご後援の元開催することができ、当日は呼子公民館に超満員のお客様を動員できました。京都府の京丹後市では子供教室が定着し始め、地元の皆様のご尽力で八月にアグリセンター大宮にて能公演が実現しましたのも大きな前進だと感じています。

 また今年は、神戸にてご活躍の頼もしい後輩、笠田祐樹さんの独立披露公演が行われ(この公演に参加することは叶いませんでしたが)、これをもちまして能楽師として独り立ちなさいましたことも喜びの一つです。厳しい内弟子修行を終えて晴れ晴れと舞台に上がられる様子は清々しいものですね。
 
 その他能meetsの活動以外にも、解説の依頼を沢山頂戴しました。東京でも音声ガイドを二度も経験させていただきました。また徳島県内の音楽教員様にも能のお話をさせていただきました。来年も様々な場所にて解説を担当致しますが、初心者のお客様にとっては「大切な入り口」です。気持ちを抜かずに勤めたいと思います。
 
 この令和五年が印象深い年になりましたのは、国より「重要無形文化財総合指定保持者」の認定を頂戴しました事。国の無形文化財である「能楽」に携わる高度な技術者として認めていただいたということで、嬉しく思うと同時に身の引き締まる思いが致します。沢山の皆様にお祝いいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。(地元の蕎麦屋、梵保庵さんではサプライズのお祝いを!本当に嬉しかったです)

 令和六年は、新年早々、吹田市のメイシアター中ホールにて「新春能」があり、「土蜘蛛 入違之伝」を演じます。十月二十七日(日)に「第三回大の会」を開催。会場を神戸の湊川神社神能殿に移し、大曲「隅田川」に挑戦します。また松華会定期能では、能の名曲として名高い「松風」を、大槻能楽堂にて五月二十五日(土)に勤めます。皆様是非お越しください。

 令和六年も、私にとりまして大きなワークである「大の会」「能meets」を中心に、色んな活動を行ってまいります。「能meets」では、現在スタッフさんと協議中ですが、また新しい試みを検討しております。皆様にお知らせできる日が早く来てほしいものです。

この一年の私の講座回数は54回。全国にて開催しました「能meets」にお越しいただきました皆様はのべ1,040名様。

 能を広める事が「この国を知ってもらう事」にも繋がると、最近は強く感じています。新年も引き続き活動してまいります。

 これからも「大の会」を、「能meets」を、「林本大」を、そして素晴らしく美しい「能楽」を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
 最後になりましたが、皆様の新年の御多幸を心よりお祈り申し上げております。      
                                        観世流能楽師 林本 大