大学での授業

レポート

遅くなってしまいましたが、本年初めての投稿です。令和3年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年早々の1月14日、御縁を頂戴しまして奈良県生駒市にございます「奈良先端科学技術大学院大学」へ能の授業に行って参りました。
情報科学研究科のアダルシュ・バラ・シャルマ先生による、日本文化を伝える授業の一環として行われました。先生はインドの方なのですが日本文化に精通しており、「是非学生に能を伝えたい」と、10年程前より能の授業を取り入れてくださっていたそうです。今年は私が講師として伺いました。
校舎は私が奈良の稽古場にいつも向かう道中にありました。静かな場所に位置しており、留学生の方々が楽しそうに敷地内を歩いておられたのが印象的でした。
 講義内容は能の歴史やその演出方法、能面や装束の解説。私はいつもあまり段取りを決めずに行います。聴講生の反応を見てその内容を柔軟的に変えていく為です。
 今回は中国・ベトナム・インドネシア・ネパール・メキシコ・アフガニスタン・タイ等20名程の留学生さんに授業を行いました。日本の方もわずかですがいらっしゃいました。
 こちらの大学の専門分野「情報科学」と比べて、「能」はかなり縁遠いもののような気がします。また、海外の皆様はほとんどの方が「能を観たこともない」「能が何かも分からない」方ばかり。「能」とは何なのか、その辺りから少しずつ紐解いていくように、そして少し「へえ~」とうなずけるような身近な日本文化に関する話題も取り入れながら、皆さんの集中力を切らさないように気を付けてお話ししようと思いましたが・・・私の心配は無用でした。
本当に皆様真剣に私の話を聞いてくださり、また最中でも分からない事あれば質問があったり自身のタブレットですぐに調べたり。私も本当にお話ししやすく、アッと言う間の1時間半でした。
 色んな目的で日本にお越しの方がいらっしゃいます。目的はどうであれ、私はせっかく日本に来ていただいたのですから、「この国に来てよかった」「この国でこんなことを手に入れた」と胸を張って母国にお戻りいただけるよう、おみやげを残していきたいといつも考えます。
 自分が好きなものは、他の人に自慢し、すすめたくなりますね。私は日本が好きですから、それを他の国の皆さんにすすめています。それは決して、高価な能面や宝物のような能衣装のきらびやかさを自慢するのではなく、その裏側にあるもの。能面自体を自慢するのではなく、この能面が長年あらゆる能楽師がバトンを次世代に受け渡していく事ができるという、日本人の、目に見えない「精神性」。今回はその辺りにまで少しですが触れる事ができました。
 この講義にあたり大変お世話になりましたシャルマ先生、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。