土蜘蛛 つちぐも

平成23年10月10日 アゼリア大正DE能 於・アゼリア大正ホール

土蜘蛛つちぐも

いかに頼光、御心地は何と御座候ぞ
あらすじ

武家の棟梁・源頼光が病気で寝込んでいるところに、侍女の胡蝶という女性が薬を持って見舞いに訪れる。その夜、いつの間にか現れた怪しい僧が頼光の枕元へと迫り、古歌を詠じるや、頼光に蜘蛛の糸を投げかける。頼光が咄嗟に枕元の太刀を抜いて斬りかかると、その僧は姿を消した。

駆けつけてきた家臣の独武者に、頼光は一部始終を語る。武装した独武者は流れた血の跡を追うと、古塚に行き当たる。それを数人の従者とともに崩していると、塚の内より土蜘蛛の精が現れる。土蜘蛛の精は蜘蛛の糸を投げかけ独武者たちを苦しめるが、独武者はついに斬り伏せ首を落として都へ帰る。

まめ知識

本来「土蜘蛛」とは、古代に大和朝廷に反抗した土着の豪族たちのことを、貶めて歴史書に記した名前です。その土蜘蛛を実際の蜘蛛の怪物として登場させたのが、この能《土蜘蛛》で、見た目にはショー的で派手な演目ですが、その裏には歴史の中に葬り去られた土蜘蛛たちの鎮魂の意味も込められているのです。

登場する源頼光は、一条戻橋や羅城門で鬼を斬った渡辺綱や金太郎としても知られる坂田金時たちを「頼光四天王」として従えた平安時代を代表する勇将です。歴史的には「よりみつ」と読むのが正しいのですが、能では敬意を払って「ライコウ」と音読みされます。この《土蜘蛛》のほか《大江山》にも登場し、まるで鬼退治のエキスパートとでも言うべき存在として描かれています。

文・朝原広基