舎利 しゃり

平成24年10月7日 大正区制80周年記念伝統芸能祭 於・大正区民ホール

舎利しゃり

今は何をか裹むべき、その古の疾鬼が執心、なほこの舎利に望みあり
あらすじ

出雲国の僧が都に上り、牙舎利(ブッダの歯)で有名な泉涌寺を訪ねる。僧が舎利を拝観していると、いつの間にか里人が一緒に舎利を拝んでいる。里人は、仏教がインドで起こってから日本にまで伝来した歴史(仏法東漸)を語り、仏舎利の尊さを讃える。すると突然空が曇り、稲妻が輝いたかと思うと、里人の顔つきが変わり、自分は実は、かつてブッダの死直後に舎利を奪った足疾鬼(足の速い鬼)の執心だと名乗ると、舎利を奪い、天井を蹴破って逃げてしまう。

ものすごい物音に驚いて、様子を見に来た寺男。お堂が荒らされた様子に、僧を責めるが、事情を説明され、かつて舎利が奪われた際には足の速い韋駄天という神様が舎利を取り戻したという話をする。そこで今回も泉涌寺守護の韋駄天に祈ることになる。

奪った舎利を懐に持って、空を逃げる足疾鬼。ふと気づくと、後ろから韋駄天が追いかけてきて、舎利を返すよう迫る。足疾鬼は舎利を抱えたまま、仏教世界の中心にある須弥山という山を駆け上がって逃げるが、途中で捕まり、一番下まで突き落とされてしまう。最後には、韋駄天に足で踏まれて責められるので、泣く泣く舎利を差し出すのだった。

まめ知識

足疾鬼と韋駄天が舞台上を所狭しと動き回る、非常に派手な能です。その派手さに隠れて目立ちませんが、前半の仏法東漸を語るあたりは、ブッダと舎利に対する敬意と情愛を繰り返し物語る謡(「今はさみしくすさましき」など)もあり、なかなか聞きごたえのある場面です。

文・朝原広基