「道成寺」ありがとうございました。

7年前の独立披露の会の日は雨。歴史ある大阪薪能で主役を頂戴したときは小雨。地元の大正区で催しを始めて開催した時も雨。

節目の舞台ことごとく雨だった私が、10月30日「道成寺」の日、朝6時半カーテンを開けると明るい空。ようやくお天道様も認めて下さったようです。

満席で立ち見も出るほど多くの皆様にお越しくださいました「山本眞義17回忌追善能」にて、大曲「道成寺」つとめさせていただきました。沢山の方々にご声援いただき、そのお声を糧にエネルギーにして、勿論まだまだ未熟ではございますが怪我なく終えることができました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。

振り返りますと一年前からずっと「道成寺」の事ばかり考えていました。

故山本眞義師が、17回忌という節目にこの機会を与えていただいた事が始まりです。

観世二十六世宗家にお許しをいただき、本番は勿論2回の申合せ(リハーサルの意味)にも東京からわざわざお越しくださいました事。そして山本章弘師に会の運営などご指導下さり、お稽古していただきました事。師匠奥様始め山本能楽堂の事務所の皆様にも手伝っていただきました事。

ご祈祷そして温かいお言葉をいただきました道成寺ご住職。チラシやパンフレットの原稿を一生懸命作ってくれた親友。ラジオに出演させてくださった桂春蝶さん。沢山の方に案内を広めて下さった社中の皆様。何も言わずお参りに行ってくれた後輩。電話やメールでいつも励ましてくれた友人たち。忙しいだろうからといつものお酒の誘いを何も言わずに減らして下さった先輩。風呂敷を手作りでプレゼントしてくれた後輩。稽古で見落としがちな部分を楽屋でこっそり丁寧に教えて下さった大先輩。当日舞台に出っ放しで疲れているのにずっと私の装束付けに傍にいてくれた同期。海外からも嬉しいメッセージをくれた後輩。鐘を丁寧に作って下さった先輩たち。会終了後の懇親会を私の目の届かない所を指揮して下さった大先輩。

そして私の道成寺を自分の事のように喜んでくれた家族。「道成寺」を楽しんで、または心配して、興奮して、涙流してご覧下さいましたお客様おひとりおひとり。

舞台は決して一人でできるものではない。目に見えるところは勿論、気が付かない内に自分の体重をこっそり支えて下さってる方がいる。

「道成寺」を終えた直後、私が思った事は「この経験を、この嬉しさを、このしんどさを、この興奮を、この技術を、この感動を、次にこの大曲を演じる後輩にどうやって伝えよう」

今度は私が後輩の体を支える番なのです。

会数日前、私の事をいつも気にかけてくださる東京の重鎮であり、先日人間国宝になられました野村四郎先生より、お祝いの色紙を頂戴しました。

「是非初心不可忘」

これまでの稽古の積み重ね、経験の積み重ねがこれからの能楽師人生の糧になることは間違いありません。しかしこれからが能楽師「林本大」の本当の始まり。いつまでも若手のつもりで先輩にぶら下がるような事は卒業せねばなりません。年相応の芸を身に付ける事は本当に大変な事だと思います。常に自分の体の中を入れ替えていく事を忘れないで、前に前に向かっていきたい、そんな役者になれるよう精一杯勤めてまいります。

本当に皆様ありがとうございました。深く御礼申し上げます。

写真は、四郎先生から頂戴した色紙、大学の後輩が作ってくれた風呂敷、そして鐘の中に入れた道成寺のお守り。

ラジオ出演しました!

ご縁を頂戴しまして、8月30日(火)午前11時頃、ラジオ関西「桂春蝶のバタフライエフェクト」に出演させていただきました。

落語家の桂春蝶さんとは、私が内弟子時代からお付き合いさせていただいております。

山本能楽堂で「上方伝統芸能ナイト」という催しがあり、能狂言以外にも、落語や講談、文楽や浪曲など幅広く伝統芸能を紹介する会で、始まってもう10年程になります。そちらにご出演いただいたのが桂春菜さん、後の桂春蝶さんです。

私の内弟子時代の頃、楽屋を走り回っている様子をよく知っておられる桂春蝶さん。今回の私の「道成寺」公演を大変喜んでくださいました。能「道成寺」の主役を勤めるということは、いわば「能楽師が能楽師として認めてもらえる試験」のようなもの。この大きな舞台に立たせていただく事を春蝶さんが知って下さり、すぐに私にご連絡いただきました。

「僕のやってるラジオにご出演していただけませんか?道成寺の事お聞きしたいです!」

…久しぶりの、そして突然の春蝶さんのメッセージに驚きました。

昔から、さほどよく話をしたという事はありませんでしたが、少し離れたところから温かく私を見守っていただきました。楽屋ではとても楽しく話をされるのに、いざ舞台となると急に眼が光る。いつも的確にご指摘をされ、また春蝶さん自身のお弟子さんへのまなざしは、厳しくも温かい、落語への姿勢、引いては今のこの国への憂い、そしてすぐそばにいる弟子への思い…。非常に視野を広くお持ちになられ、私も学ばせていただくところは多々ありました。

私が独立をし、地元の大正区で催しをすることになった時、私は舞台というものに意識の深いこの方に是非お越しいただきたいと、厚かましくも能の公演の司会に、出演を依頼させていただきましたら、快くお引き受けくださいました。それから5年間、続いてお越し頂きましたことは、今でも深く感謝いたしております。

しかしながら、どんどん落語界でビッグになっていかれる春蝶さん。お話しする機会も減り、少し寂しい思いもしながら、影ながら応援させていただいておりました。実は、こっそり落語会を拝見に伺ったこともありました。

その春蝶さんからのお誘い!本当に嬉しく思いました。

ただ、その久しぶりの春蝶さんとの会話が、広く世間に流れている!私はガチガチで当日を迎えました(その時の様子がこの写真です。私、ガチガチでしょう!?)。
上手く話せたかどうか分かりませんが、憧れの春蝶さんと少しでも時間を共有できたこと、とてもうれしく思います。そしてこの機会を作って下さったラジオ関西のスタッフの皆様、ありがとうございました。

私が「道成寺」を初演させていただくということで、たくさんの皆様が動いてくださっている。この事を胸にしっかり抱いて、命がけでつとめさせていただきます。